F「よいとこどり」

Category: シュウカツ俯瞰
このプロジェクトでは、皆さんへ中小企業や小規模事業者で働くことの魅力をお伝えするのも重要な目標となっています。そこで、今回はすべてを満たす会社は無い、あなたが何を望むのかによる、ということをお伝えしたいと思います。

矛盾の話はお聞きになっていると思います。
ある男が矛(ほこ)と盾(たて)を市場で売っていたそうです。
で、その男は矛を売る際には「どんな盾でも貫ける鋭い矛はいらんかね」。
盾を売る際には「どんな矛でも防いでしまう丈夫な盾はいらんかね」。
で、それを見ていた野次馬が「お前の矛でお前の盾を突いたらどうなるんだ」と言ったそうです。

話は飛びますが、アメリカという国は今二つの政治勢力に分裂し、それが固定化しつつあります。
そのとばっちりで、国の予算が決まらずに、お金が無いので政府機能が麻痺するとか、オバマ大統領が困りきっています。
その二つとは、「政府のサービスはそんなに要らないので税金を高くするな」という共和党と、「税金は多少高くてもよいので政府のサービスはきちんとしろ」という民主党です。
共和党のカラーが赤で、民主党のカラーが青ですが、ほとんどの州では色分けが固定化されていて、都市部の多い東海岸(ニューヨークとかボストンとか)や西海岸(ロサンゼルスやシアトルとか)は青、田舎の多い中西部と南部は赤、ごく少数の州が選挙のたびに揺れ動くスウィング・ステートと呼ばれて、選挙が勝つか負けるかがこのスウィング・ステートの結果次第という状況です。例えば、フロリダ、オハイオ、ペンシルバニア、ノースカロライナあたりの州です。

どうして中国の故事とアメリカの政治が結びつくかといいますと、それは「よいとこどり」はありえない、という原則を知っておいていただきたいからです。
すべての矛を防げる盾と、すべての盾を貫ける矛は両立しません。
高い政府のサービスと、低い税金は両立しません。
どちらかを選ぶしかない、ということなのです。

これは皆さんの今後の進路にも大きく関わってくる原則です。
入社しやすくて、給料も高くて、安定していて、出世しやすくて、仕事が楽な会社などはありえないのです。
「あれもこれも」はありえないのです。
ですので、自分が何を優先するのか、を決めていきませんと、入社してもすぐ退社する、という結果になる危険性があります。
そして、日本という社会では、よほどに腕が立たないかぎり、履歴書が汚れると、先の展開は望めないものです。
「履歴書が汚れる」というのも隠語に近いですが、やみくもに転職を繰り返した履歴書をキャリア・コンサルタントの業界ではそう言います。
要するに、まだまだ日本の社会における労働の流動性は高くなく、かつ転職の保証もされていないということなのです。
その意味では、入社3年以内に新入社員の3分の1が辞めるという現状は、大変肌寒いものがあると言えるでしょう。

ただし、腕が立つのであれば話は別です。
この場合は、腕の磨ける会社を選ぶ、という選択が魅力的になるでしょう。
会社はお金(賃金)をもらいながら通える道場のようなものでもあるからです。

そういう意味では、皆さんが会社をどういう観点から選ぶのか、これがとても大切では無いでしょうか。「よいとこどり」はできない、という原則をぜひご記憶いただきたいと思います。