にゅうとん倶楽部

Category: ARECTIMES

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たまねぎの皮を商品にするアイデアは、どこから?


起業する前、私は青果市場に勤めていました。そこで、新規事業としてカット野菜を販売しよう、という話になり、これが、たまねぎの皮に注目するきっかけになりました。その事業というのは、たとえば、外食産業さんに、キャベツを芯まで抜いてハーフカットで収めるとか、たまねぎは皮をむいて中の食べられる分だけ収めるという仕事。今までの経験から、食べられないところはおそらく数パーセント程度と考えていたんです。けれど、実際にやってみますと、20数パーセント以上は、実は、食べられないという事が分かりました。特に、たまねぎは1日4トン分という大量受注でしたから、皮だけではなく、たまねぎの芯や頭の部分など意外と要らない部分があって、毎日1トン以上のゴミが発生しました。この処分を出来るだけ安いコストでやろう、と知恵を絞っていたんですが、あるとき、ある環境業者から「バクテリアでその生ゴミを消滅出来ますよ」と。それで専用プラントを作りまして、バクテリアを何キロ入れれば、1トンのゴミが消滅するか、と試していたら、なんと3日でバクテリアのほうが全部死滅してしまいました。結果は、予想外でしたが、たまねぎの皮には、スゴイ殺菌力があるんだ、とここで分かったんですね。



生ゴミの処理は大きな経営課題ですよね

結局、生ゴミとして処理するのにも、お金がかかりすぎるんです。それで、殺菌力もありそうだし、何とかして利用価値を見つけよう、と。いろいろな研究レポートを探し出して、100件くらいの資料を集めました。その中で着目したのがポリフェノール、そしてフラクトオリゴ糖でした。たまねぎの皮だって、人の健康にもいいのではないか、という仮説を立てたんですね。ただ、皮のままでは食べにくいので、乾燥させてみよう、と。でも、そんなこと、今まで誰もやったことがないから、どこに相談しても、いい返事がなかったんです。それを聞きつけた駒ヶ根の株式会社ヤマウラさんが、うちでやってみましょう、と気持ちよく引き受けてくれて、見事な乾燥プラントが完成しました。そこで試作品をつくって、成分の分析をしたり、豚の飼料に使っていい結果を出したり、さらには製品化までいろいろな方のご協力を得て、ラベルの作り方、パッケージの仕方までご指導いただきまして、平成16年7月9日にようやくデビューできたんです。



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たしかARECに入ってからの発売ですよね

ARECに入っていて一番良かったのは、信州大学各学部と連携が取れて、私のテーマによっての学部選択をして、そこにアカデミックなデータを積み上げていくことが非常にしやすくなりました。さらに、異業種交流ができること。たまねぎの皮の事業化、商品化も、一人では、とてもできなかったと思います。これは6社でコラボレーションを組みまして、各社から専門技術をご提供いただけた、ということが、一番のスピード化とローコストを実現できた理由です。私個人ではなく、ARECという看板があって、その看板の中でみんながコラボレーションに参加していただけたんだな、という風に感じています。




最後に、若い方へのメッセージを

にゅーとん倶楽部の理念は、今まで使われていなかったものに、どのようにして命を与えるか、価値をみつけてやるかということ。これは私の生涯のテーマでもありますが、若い人にも、とにかくチャレンジ精神を持って欲しい。本人の意欲ですね。決断したら絶対やるぞという熱い思い、情熱がやっぱり不可欠の条件じゃないですかね。それと、裏も真なり、逆も真なりという言葉がありますが、いわゆる発想の転換が大切。頭の柔軟性がとても重要だと思いますね。