F「関係構築力」

Category: シュウカツ俯瞰
皆さんが社会、とりわけ中小企業や小規模事業者で働く際に重要なことの一つは、皆さんの能力です。その能力を伸ばすためには自分自身をマネージメントしないといけない、というお話を前回差し上げました。
そうした人間の能力を構成する要素の一つに“コンピテンシー”というものがあります。
あまり馴染みの無い言葉でしょうから、少し具体的にお話してみたいと思います。

何度人に会っても覚えていただけない、と悩む人がいます。
これでは、せっかくの出会いも意味がありません。なにしろ、お会いしても覚えていただけないのでは、その人と関係を築くなどは夢のまた夢です。

どうしたら人に覚えていただけるか、そのコンピテンシー(行動特性、行動の癖)を“関係構築力”と言います。
関係構築力:特定の人と良好な関係を築くことができること。
特定の人と良好な関係を築くには、最低でもその人に覚えていただかないとはじまりません。

これがなかなか難しいのです。
どうしてか、と言いますと、人間には「よく思われたい」という気持ちがありますが、その気持ちは「悪く思われたくない」ということに他なりません。そうしますと、どうしても控え目に振舞いがちです。
これでは、いつまでたっても(偶然のチャンスでもないかぎり)、覚えてはもらえません。
特に相手に社会的地位があり、毎日たくさんの人に会っている人であればなおさらです。
ではどうしたらよいのでしょうか。これは意識して何かを行動しなければいけない、ということです。漠然と会っていたのでは、いつまでたっても同じことです。

例えば、野村證券の営業マンははじめてお会いしたお客さま(あるいはお客さま候補者)に、必ず巻紙、毛筆でお会いした御礼の手紙を出します。
毎日毎日、毛筆ですから時間もかかります。大変な営業です。
しかし、巻紙、毛筆で手紙をもらった人はどう思うでしょうか。これはまず忘れないでしょうね、その営業マンから株や投資信託を買うかどうかは別としても、まず忘れないでしょう。

これを笑い話だと思えばそれまでです。要するに、意識して行動する、という極端な、かつ明確な答えがこれです。

そこまでやったら、逆に嫌われるのでは、そう思う人も多いでしょう。でも、いつまでたっても覚えてもらえないよりは、多少は無理をしてでも覚えていただく方がましかもしれません。
すべての人に好かれることはありえないのですから、無理をして嫌われたら、それはあきらめるしかないでしょう。

ちなみに、筆者は「誘われたら必ず呑み会に顔を出す」ということを、若い頃から今までずっと守っています(よほどの二日酔いで無いかぎり)。単に酒好きだからという理由もありますが、要するに出会いの機会を一度でも逃したくないのです。

まあ、そこまで極端ではなく、関係構築力を改善したいと思う人にはこれがお薦めです。
お昼を食べるレストランでも、夜にお酒を呑む居酒屋でも、どこでもかまいません。
三回、そのお店を使ったら、お店の人に顔と名前を覚えていただけるように自分なりの工夫をしてみてください。覚えていただくように意識して行動するのです。これをやり続けると、間違いなく関係構築力は改善されます。

なお、コンピテンシー(行動特性)とは、こうした行動する癖のようなものです。癖ですので、意識すれば必ず身につきます。そういう癖を身につけると、少し自分が変われるかもしれませんね。
どうでしょうか、“コンピテンシー”に少しは近づいていただけたでしょうか。