C「“うさぎの里”に見られるビジネスのヒント」

Category: シュウカツ俯瞰
第1話では、ビジネスにおける“価値観”のお話を差し上げました。
今回は、ビジネスを需要と供給という観点から見てみたいと思います。

ゴールデンウィーク前半は、加賀大聖寺から信州上田へと小旅行でした。
どういう目的だったのかは、いずれご紹介することもあるでしょう。

さて、昭和40年代からバブルの昭和60年代まで、日本中の観光施設が巨大化し、ある種の装置産業となったことは皆さんもよく目にしていることだと思います。
どの温泉地に行っても目にする馬鹿でかいホテル(それも時々は廃墟と化していますが)、どの観光地に行っても目にする大規模なテーマパークやドライブイン、ああいった巨大施設の末路は皆さんもよくご承知でしょう。
典型的な過剰装置で、全国いたるところに不良債権と倒産をまき散らかしたものです。

今回の旅で訪れた北陸もそうした観光施設の多い地域です。
その中で、一つ驚いたことがありました。
五六年ほど前に訪れたドライブインが一変していたのです。
かつては、輪島や山中の漆器、九谷焼といった定番の高額お土産品がところ狭しと置いてある、ちょっと悪口で言えば、どこの観光地にもあるような、暗くてはやらないドライブインでした。
少なくとも筆者がああいった観光施設でお土産品を買うことは無いでしょう。

ところがところが、今回訪れて見ると人また人、人の山です。
もちろん、ゴールデンウィークで行楽日和ということもあるでしょうが、とにかくイメージが一新されていました。
なんと、輪島や山中の漆器、九谷焼などの高額お土産品は店の奥に追いやられ、あらゆるところにうさぎ、うさぎ、うさぎです。
生きているうさぎもいれば、置物のうさぎ、お土産のうさぎ、ぬいぐるみのうさぎ、どこにでもうさぎ、うさぎ、うさぎです。
これには驚きました。

で、うさぎに群がる子どもたち、親御さん、若いカップル、お孫さんとおじいさんおばあさん、まさに人の群れとうさぎの群れです。

どうやら経営者が世代替わりをしたらしいのですが、おもわず「なるほど」と思いました。
かつての栄光の日々、高額お土産品が飛ぶように売れていたバブルの時代をきっぱりとあきらめ、遊ぶところに不自由している子ども連れに狙いを変える、しかも、設備投資がほとんどいらない「うさぎ」に目をつける、実に素晴らしいではないですか。
筆者は、商売の原点は「困っている人をみつける」ことだと考えています。
困っている人が困らないようにする、これが商売の普遍性では無いかと思うのです。
逆に考えていただければわかりやすいと思うのですが、満腹の人に食べ物は売れませんし、健康な人に医者は要りません。
ですので、食べ物商売は空腹時(めしどき)が勝負ですし、医者には病人が欠かせません。
その意味で言えば、このドライブインの経営者は間違いなく「困っている人をみつけた」のです。
子どもが喜んで、あまりお金のかからない観光施設に困っている親御さんやおじいさんおばあさんを、です。

こうした「困っている人をみつける」ことが、ビジネスにおける需要を意味していると筆者は考えています。
皆さんもご自分の周りを見回してください、困っている人はいませんか。
筆者の目には、やる気のある若者を求める地域の中小企業や小規模事業者の経営者の姿がかなり鮮明に見えますが、いかがでしょうか。