F第49話「インテグリティ」

Category: シュウカツ俯瞰
インテグリティ(integrity)、辞書をひけば「高潔」「誠実」「完全な状態」といった日本語が並んでいます。
この言葉は、ドラッカーが経営者やリーダーに欠かせない能力(コンピテンシー)としてよく取り上げています。
ちょっと長いですが、参考までにこんなことを言っています。
「うまくいっている組織には、必ず一人は、手をとって助けもせず、人づきあいもよくないボスがいる。この種のボスは、とっつきにくく気難しく、わがままなくせに、しばしば誰よりも多くの人を育てる。好かれている者よりも尊敬を集める。一流の仕事を要求し、自らにも要求する。基準を高く定め、それを守ることを期待する。何が正しいかだけを考え、誰が正しいかを考えない。真摯さよりも知的な能力を評価したりはしない。このような素質を欠く者は、いかに愛想がよく、助けになり、人づきあいがよかろうと、またいかに有能であって聡明であろうと危険である。そのような者は、マネジャーとしても、紳士としても失格である。」
ここで「真摯さ」「素質」と言っているのが、インテグリティだと考えてください。

皆さんが中小企業に勤める、あるいは社会に出ていずれかの組織に属するとしましょう。
その際に、ビジョンとして組織の将来に関与するという目標を立てるとすれば、もちろん、その中には組織のトップになるとか、経営陣に入るとか、そうではなくても組織をよりよくするためにチームワークを心がけるとか、そういったいろんな幅のある目標が含まれますが、いずれにせよ組織の流れるままに自分も流れるのは嫌だと思うのであれば、ぜひ考えていただきたいのがインテグリティです。

他人に好かれるよりも、他人からの尊敬を重視する生き方がそれだ、と考えてもよいでしょう。
例えば、いわゆる八方美人、誰からも嫌われないように相手に応じて伝える内容を変える、そういった生き方は、確かに嫌われることは少ないでしょうが、はたして尊敬されるでしょうか。
例えば、いわゆる付和雷同、みんなの意見をよく把握して、そこから外れるような意見は言わない、そういった生き方は、確かに仲間外れにされる危険は少ないでしょうが、はたして土壇場の時に頼られるでしょうか。

もちろん、自分勝手ではいけませんし、自分のためにだけ行動するのは論外です。
このインテグリティが極めて強い経営者の一人にGEの元CEOであるジャック・ウェルチがいますが、彼は「リーダーにとって一番重要なことは何ですか」という質問に次のように答えています。
「自信、シンプルに考える力、他人の成功を自分の成功と思う遺伝子の三つだ。自信がないと、物事を複雑に考えすぎてしまう、簡潔に考える力がなければ、複雑で不透明な状況で大きな決断ができなくなってしまう。他人の成功を自分の成功と思う遺伝子がなければ、いずれ誰もついてこなくなる。(中略)リーダーシップとは、自分のためではなく、周りの人のために働くことだ。」
ここでの「他人の成功を自分の成功と思う遺伝子」「リーダーシップとは、自分のためではなく、周りの人のために働くこと」という部分が、ジャック・ウェルチにとってのインテグリティではないかと思うのです。

個人的にお勧めしたいのは、次のような価値観を持つことです。
第一に、表裏が無いことです。
最悪なのは、面従腹背(表面では服従するように見せかけて、内心では反抗すること)です。心から従おうと思うのであれば従う、そうでないのであれば狎れたり、お愛想したり、従ったふりはしない(もちろんイコール反抗するという意味ではありません)、そういう姿勢が必要でしょう。
組織の中で面従腹背がはびこるようになると、多くの場合、その組織は駄目になってゆきます。いわゆるイエスマンだけが目立つ組織ですね。
第二に、異なる価値観を尊重することです。
最悪なのは、自分の価値観を押し付けることです。それが他人と共有できる普遍性を持つのであれば別ですが、そうでないとすれば、いわゆる正義の押し付け、これほど厄介で迷惑な話はありません。
自分が尊敬されたいと思うのであれば、他人を尊敬できなければいけないのです。もちろん、心から尊敬に値すると思えるのであれば、です。
第三に、これが自分の核心だという価値観を曲げないことです。
最悪なのは、相手の価値観とあわせて、その都度、その都度、判断する基準を変えることです。もちろん、相手の価値観を心から正しいと思うのであれば、過ちを改むるに憚ることなかれ、です。そうでもないのに、あっちへふらふら、こっちへふらふらでは話の他です。
異なる価値観を尊重することと、自分の核心だという価値観を曲げないことは、努力すれば両立できると考えてください。互いの違いを認めあえてこそ、はじめて互いに尊敬できると考えていただいてもよろしいでしょう。時に好敵手ほど相手を認められるのですから。

いかがでしょうか、インテグリティにふさわしい日本語が最後まで出てきませんでしたが、何となくインテグリティの持つ意味がおわかりいただけたでしょうか。ちなみに、佐久間陽一郎さんという能力開発の先達はインテグリティを「尊厳性」と表現しています。その佐久間陽一郎さんが主導しているスキルアカデミー(https://www.skillacademy.jp/)の紹介を差し上げます。
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