D「階層社会」

Category: シュウカツ俯瞰
筆者が危惧していることに、「階層社会の固定化」という問題があります。それは、日本が豊かな層と貧しい層に分かれ、かつそれが固定化してしまうことです。
皆さんはこれから社会に出ることになりますが、以前もお話したように(第125話「危険な貧困のスパイラル」)、「年収の低さは子どもたちへの教育投資がままならないということを招きます。教育投資がままならない子どもたちは、かなりの確率で低い学歴を余儀なくされます(東大の例でおわかりのように)。低い学歴は低所得を招く危険性が高いです。そうしますと、子どもたちが成長した後も、同じように低所得⇒低教育投資⇒低学歴⇒低所得と、マイナスのスパイラルがはじまることになります。」という恐ろしさがあります。そうしたマイナスのスパイラルに皆さんが入ってしまうことだけは避けなければいけません。

そこで、気になるデータを一つ申し上げましょう。
東京大学が在校生の家庭状況を調査した「2010年学生生活実態調査の結果」(2011年12月発行)によれば、世帯年収950万円以上の家庭が51.8%に上ったそうです。ちなみに、厚生労働省発表では世帯平均年収は約550万円ですから、東大生の半分以上が日本の平均世帯年収の約2倍、もしくはそれ以上を稼ぐ家庭の子どもということになるのです。
また、東大家庭教師友の会が現役東大生に行ったアンケートによると(2009年)、「学習塾に通った経験はありますか?」という問いに対して85.9%の学生が「ある」と回答しています。さらに、「学習塾が必要だと思った時期はいつですか?」という問いに対しては、中学受験時33.6%、高校受験時23.5%、大学受験時27.8%、その他の時期15.2%と、中学受験に備えて学習塾に通いはじめた学生が多いことがわかります。そして、ベネッセコーポレーションの最新の中学受験調査によると、「中学受験を迷う理由」の1位は「私立中学は授業料が高いから」(28.8%)、2位は「受験準備(塾など)にお金がかかるから」(22.9%)となっており、中学受験に踏み切る際の最大のネックは“お金の問題”であることが明らかになっています。
従って、経済格差がそのまま教育格差につながっていて、特にその分かれ目となるのが“中学受験”と言えるでしょう。

そうしますと、日本という国をさまざまに動かしている霞が関の国家公務員の多くは東大卒業ですから、彼らの多くは貧しさを知らず、親の豊かさの庇護にあって進学をしてきたことになります。
そうした彼らが国の未来を考えた場合、やはり貧しい階層への理解は乏しいことになり、ともすれば貧しい階層への配慮がないままに国の青写真を作ることになってしまうのではないでしょうか。
そういう意味では、彼ら以外の人たちが日本の未来にコミットメントする、ということが欠かせないと思うのです。もちろん、コミットメントのあり方はさまざまにあるでしょう。自らが国家公務員や政治家を目指すというのもあり、あるいは地域の問題に関わってゆくというのもあり、あるいは機会をとらえてメッセージを社会に発信するというのもあり、まさにさまざまです。
こうした社会へのコミットメントを、サルトルはアンガージュマン(engagement)と名付けたこともご記憶ください。