日信工業株式会社

Category: ARECTIMES


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ブレーキシステムは、自動車部品の中でも重要ですよね。


ブレーキは、人の生命に関わるものですからね。いま、環境と安全ということをキーワードにして、日夜、私どもの技術者400名ほどで必死に開発を進めているんです。でも、コスト面の要求も厳しいものがありますし、現状の技術の寄せ集めでは限界があるのではないか、と。それはそれで進めるとして、同時に、もっと飛躍するような技術が必要ではないか、といろいろ素材レベルから検討してきました。その中で、特にカーボンナノチューブに注目して、私どものプロジェクトがスタートしたんです。



社内ではなくARECに入居したのは何故でしょう?

自社の工場には、自動車をシミュレーションする大きな装置がありまして、磁場や振動の問題で、プロジェクトで必要な精密な装置を動かせないことがわかった。それが第一の現実的な理由です。それと、こちらの信州大学にはカーボンでは世界的権威の遠藤先生をはじめ、高分子系の有名な先生方が沢山いらっしゃって、そういう先生方と連携がとりやすいということも大きな魅力でした。今は、工学部、繊維学部、医学部と連携しながら、研究開発を進めています。さらに、3つ目の理由としては、いわゆる機密問題がありまして、少し会社から出たところに研究所を求めていたということです。


具体的にはどのような研究をされたんですか?

カーボンナノチューブは、強くて硬いのに柔軟であるという稀な特性を持っています。だからこそ、世界的に注目されているんですが、我々は、このカーボンナノチューブとアルミ系の複合を試みて、ワンランク上のものをつくることに成功しました。この基礎研究は平成18年にNEDO※からも、ひじょうに高得点で表彰されました。さらに、このとき「セルレーション」というものを発見したんです。これは私どもの造語でして、動植物の細胞「セル」のようなカタチができていくプロセスをそう名づけました。このようなナノレベルのセルレーションによって、物質の性質が変化して、耐熱性が物凄く上がった。硬く強くしても全体的に柔軟でした。これを、我々はブレーキのゴム部品に適用しようと、いま試作品をつくっています。

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ゴムに代わる素材ということですね

ゴムという分野は、一般的に消耗品というイメージがありますが、その耐久性が伸びることによって、ひじょうに応用範囲が広がります。ブレーキだけではなく、医学の分野でも人工関節など、この素材が活躍できるところはたくさんありますね。



夢のあるお仕事ですね。若い技術者も参加しているんですか?

うちのグループは7名いますが、年寄りは、私ともう一名で、あとは全員若い20代、30代ですよ。うちのような研究開発には、熱意が何よりも重要だと思っています。熱意こそ、すべての発明や発見の源ですからね。新卒や中途の人材採用も会社の総務まかせではなくって、熱意がある人を探すために、自分で大学へも顔を出すんですよ。それと、本業のブレーキ以外の開発もやってるので、やはり、説明しないとわかってもらえない。大学へ飛び込んでいって説明会を開催してもらったりしています。まぁ、30分くらいの面接で、本物の熱意を見抜くのは、なかなか難しいんですがね。


※NEDO=独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構